はじめに

ITエンジニアの採用は、企業にとって非常に重要な課題です。特に、優秀なエンジニアを確保するためには、採用コストが大きな問題となります。採用単価が高騰する中で、いかにして効率的に人材を確保するかが鍵となります。

本記事では、採用単価の基本から、ITエンジニアの採用単価の現状、そしてコストを抑えるための具体的な戦略について詳しく解説していきます。

採用単価の基本

採用単価とは、1人の社員を採用するためにかかる総コストのことを指します。このコストは「外部コスト」と「内部コスト」の2つに分けられます。まずは、それぞれのコストについて詳しく見ていきましょう。

採用単価とは

採用単価は、企業が新たな人材を採用する際にかかる費用の総額を指します。この費用には、求人広告費や人材紹介会社への手数料、面接にかかる人件費などが含まれます。採用単価を正確に把握することで、採用活動の効率を高めることができます。

外部コスト

外部コストとは、採用活動において外部の業者やサービスに支払う費用のことを指します。具体的には以下のようなものがあります。

  • 求人広告費: 求人サイトや新聞、雑誌などに求人広告を掲載するための費用です。例えば、リクナビやマイナビなどの大手求人サイトに掲載する場合、数十万円から数百万円の費用がかかることがあります。
  • 人材紹介手数料: 人材紹介会社を利用する場合、成功報酬として採用者の年収の30%程度を支払うことが一般的です。例えば、年収500万円のエンジニアを採用した場合、150万円の手数料が発生します。
  • 合同説明会の出展費: 合同企業説明会やキャリアフェアに出展するための費用です。会場費やブース設営費、パンフレット制作費などが含まれます。
  • 採用管理システム費: 採用プロセスを効率化するためのシステム利用料です。例えば、ATS(Applicant Tracking System)を導入する場合、月額数万円から数十万円の費用がかかります。

内部コスト

内部コストとは、社内での採用活動にかかる費用のことを指します。具体的には以下のようなものがあります。

  • 人件費: 採用担当者や面接官の人件費です。例えば、採用担当者が1人のエンジニアを採用するために100時間を費やした場合、その人件費が内部コストとして計上されます。
  • 応募者の交通費: 面接に来る応募者の交通費を企業が負担する場合、その費用も内部コストに含まれます。特に遠方からの応募者の場合、交通費が高額になることがあります。
  • 入社祝い金: 入社が決まった際に支払う祝い金です。例えば、入社祝い金として10万円を支払う場合、その費用も内部コストに含まれます。
  • リファラル採用のインセンティブ: 社員が知人や友人を紹介して採用が決まった場合に支払うインセンティブです。例えば、紹介者に対して5万円のインセンティブを支払う場合、その費用も内部コストに含まれます。

採用単価の計算方法

採用単価を正確に把握するためには、外部コストと内部コストを合計し、それを採用人数で割る必要があります。以下の計算式で求めることができます。

採用単価 = (外部コスト + 内部コスト) ÷ 採用人数

外部コストが300万円で内部コストが100万円だった場合、5名のエンジニアを採用すると採用単価は以下のようになります。

採用単価 = (300万円 + 100万円) ÷ 5名 = 80万円

このようにして算出された採用単価をもとに、採用活動の効率を評価し、改善点を見つけることが重要です。採用単価を抑えるためには、外部コストと内部コストの両方を見直し、無駄な費用を削減することが求められます。

ITエンジニアの採用単価の現状

ITエンジニアの採用単価は、他の職種と比較して高い傾向にあります。これは、エンジニアの需要が高まる一方で、供給が追いついていないためです。ここでは、ITエンジニアの採用相場と採用手法別の平均単価について詳しく見ていきます。

ITエンジニアの採用相場

ITエンジニアの採用相場は、業界や地域によって異なりますが、一般的には高額です。2023年に発表された調査によると、IT・通信・インターネット業界の平均採用コストは610万円で、全業界の中で3番目に高くなっています。

また、「前年よりも採用コストが増えた」と答えた企業が42.3%に上り、業界全体で採用コストが上昇していることがわかります。

採用手法別の平均単価

採用手法によっても、ITエンジニアの採用単価は大きく異なります。以下に、主要な採用手法別の平均単価を紹介します。

人材紹介

人材紹介サービスを利用する場合、ITエンジニアの平均採用コストは295.3万円です。人材紹介会社に支払う成功報酬は、採用者の年収の30%が一般的です。例えば、年収500万円のエンジニアを採用した場合、150万円の手数料が発生します。

求人広告

求人広告を利用する場合、エンジニア1人あたりの平均採用コストは97.3万円です。求人広告は、大量のエンジニアを一気に募集したい場合に最適です。採用人数が多ければ多いほど、コスパが上がります。しかし、応募が集まらなかった場合でも広告費が発生するため、注意が必要です。

合同企業説明会・フェア

合同企業説明会やキャリアフェアに出展する場合、平均採用コストは104.8万円です。対面で求職者の雰囲気を直接確かめることができる点がメリットですが、イベントに参加する社員の人件費や準備にかかる工数が増える点には注意が必要です。

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングの平均採用コストは141.5万円です。企業側から求職者へ直接スカウトメールを送り、アプローチする手法で、採用要件にマッチした人材をピックアップしてアプローチするため、ミスマッチを防ぎやすいです。しかし、スカウトメールの文面を個別に考える必要があり、採用担当者の人件費が増える可能性があります。

求人検索エンジン

求人検索エンジンを利用する場合、平均採用コストは78.7万円です。無料で求人情報を掲載できるサービスもありますが、上位表示されるためには有料プランを利用する必要があります。求人検索エンジンは、幅広い求職者にアプローチできる点がメリットです。

その他の経費

HPの制作やその改修費の他、面接会場費、そして応募管理システム費などが経費に当たります。しかし自社コンテンツを充実させることで、長期的に見ると外部コストの削減が期待できます。

採用単価が高くなる理由

ITエンジニアの採用単価が高くなる理由は、主に以下の3つです。

エンジニア不足の加速

厚生労働省の「一般職業紹介状況」によると、2023年7月の有効求人倍率は3.7倍で、前年と比較しても高止まりしています。エンジニアの需要が高まる一方で、供給が追いついていないため、採用単価が上がっています。

専門性の高まり

IT技術の進化に伴い、エンジニアに求められるスキルも高度化しています。企業間での優秀なエンジニアの獲得競争が激化し、採用単価が上昇しています。また、採用活動が長引くことで、求人広告費も増加します。

採用チャネルの多様化

採用チャネルが多様化しているため、従来の手法だけでは求める人材を採用することが難しくなっています。新しい採用手法を試行錯誤する必要があり、その過程でコストがかかることが多いです。

以上のように、ITエンジニアの採用単価は高くなる傾向にありますが、採用手法や戦略を見直すことで、コストを抑えることが可能です。次回は、採用単価を抑えるための具体的な戦略について詳しく解説します。

採用単価を抑えるための戦略

採用単価を抑えるためには、まず現状のコスト構造を理解し、効果的な戦略を立てることが重要です。ここでは、具体的な戦略について詳しく解説します。

コスト上昇要因の分析

採用単価が高くなる要因を分析することは、コスト削減の第一歩です。外部コストと内部コストを分けて、それぞれの内訳を細かく見ていきましょう。

  • 外部コスト: 求人広告費、人材紹介手数料、合同説明会の出展費、採用管理システム費など。
  • 内部コスト: 採用担当者や面接官の人件費、応募者の交通費、入社祝い金、リファラル採用のインセンティブなど。

これらのコストを把握した上で、効果が薄い施策を見直し、無駄な費用を削減することが求められます。例えば、効果が低い求人広告を減らし、より効果的な採用手法に予算を振り分けるなどの工夫が考えられます。

採用基準の見直し

採用基準が高すぎると、採用活動が長期化し、コストが増大する可能性があります。スキルや経験の条件を緩和し、未経験者や若手人材を視野に入れることで、採用コストを抑えることができます。

例えば、IT業界に興味を持つ若手層をターゲットにすることで、求人広告の効果が高まり、応募者数が増える可能性があります。また、未経験者を採用し、社内で育成することで、長期的な人材確保にもつながります。

派遣社員やフリーランスの活用

正社員の採用が難しい場合、派遣社員やフリーランス、副業のエンジニアを活用することも有効です。これにより、社会保険料の負担を抑えつつ、高いスキルを持つ人材を確保することができます。

例えば、特定のプロジェクトに必要なスキルを持つフリーランスを短期間で雇用することで、プロジェクトの成功率を高めることができます。また、派遣社員を活用することで、長期的な人材育成の負担を軽減することも可能です。

既存社員の離職防止

新たな人材を採用するだけでなく、既存社員の離職を防ぐことも重要です。職場環境の改善や福利厚生の充実を図り、社員の定着率を高めることで、採用コストを抑えることができます。

例えば、定期的な面談を実施し、社員の悩みや要望を把握することで、早期の離職を防ぐことができます。また、資格取得支援やキャリアパスの明確化を通じて、社員のモチベーションを高めることも効果的です。

コストパフォーマンスの高い採用手法の選定

採用手法を見直し、コストパフォーマンスの高い手法を選定することが重要です。以下に、具体的な手法を紹介します。

ソーシャルリクルーティング(SNS採用)

SNSを活用した採用手法で、TwitterやFacebook、LinkedInなどを通じて求職者にアプローチします。SNSは無料で利用できるため、コストを抑えつつ広範囲に情報を発信することができます。

例えば、企業の公式アカウントで求人情報を発信し、フォロワーにシェアしてもらうことで、短期間で多くの求職者にリーチすることが可能です。また、SNSを通じて企業の雰囲気や文化を伝えることで、求職者の関心を引きやすくなります。

リファラル採用

社員の知人や友人を紹介してもらう採用手法で、紹介者にインセンティブを与える制度を設けることが一般的です。リファラル採用は、社員のネットワークを活用するため、コストを抑えつつ信頼性の高い人材を確保することができます。

例えば、紹介者に対して5万円のインセンティブを支払う場合、人材紹介会社に支払う成功報酬と比較して大幅にコストを削減することができます。また、紹介された人材は企業文化にマッチしやすいため、早期離職のリスクも低減します。

求人検索エンジン

Indeedや求人ボックスなどの求人検索エンジンを活用することで、無料で求人情報を掲載し、幅広い求職者にアプローチすることができます。上位表示されるためには有料プランを利用する必要がありますが、コストパフォーマンスは高いです。

例えば、無料プランで求人情報を掲載し、応募者の反応を見ながら有料プランに切り替えることで、効果的にコストを管理することができます。また、求人検索エンジンを活用することで、他の採用手法と併用しながら効果を最大化することが可能です。

採用サイトの活用

自社の採用サイトを充実させることで、長期的に外部コストを削減することが期待できます。採用サイトには、企業の魅力や働く環境、社員の声などを掲載し、求職者に対して企業の魅力をアピールします。

例えば、採用サイトにブログや動画コンテンツを追加し、定期的に更新することで、求職者の関心を引き続けることができます。また、SEO対策を施すことで、検索エンジンからの流入を増やし、自然応募を促進することが可能です。

成功事例

ここでは、実際に採用単価を抑えることに成功した企業の事例を紹介します。

IT系大手企業 D社の事例

目標人数達成と採用コストの大幅削減

D社は、CTO候補や開発エンジニア、フルスタックエンジニアなどの募集職種で、採用目標が高くなったが、人材紹介経由の紹介数が伸び悩んでいました。そこで、ダイレクトリクルーティングを導入し、初期費用+年収15%+代行費用で採用活動を行いました。

結果として、採用人数は12名に達し、採用単価は1名あたり120万円に抑えることができました。これにより、目標人数を達成しつつ、採用コストを大幅に削減することができました。

システム系大手企業 M社の事例

定期的な人員確保と採用コストの大幅削減

M社は、社内SEやテクニカルサポートエンジニア職の募集で、ダイレクトリクルーティングを自社内で運用していましたが、効果を実感できずにいました。そこで、ダイレクトリクルーティング支援サービスを導入し、スカウト送信数や自然応募数を大幅に増やすことに成功しました。

結果として、スカウト送信数は191通、自然応募数は13.5件に増加し、スカウト返信率も7.1%に向上しました。これにより、人材紹介会社と比較して1人あたりの採用単価を42万円に抑えることができました。

おわりに

ITエンジニアの採用は、企業にとって非常に重要な課題であり、その採用単価を抑えることは経営効率を高めるためにも欠かせません。本記事では、採用単価の基本から、ITエンジニアの採用単価の現状、そしてコストを抑えるための具体的な戦略について詳しく解説しました。

採用単価を抑えるためには、まず現状のコスト構造を理解し、効果的な戦略を立てることが重要です。外部コストと内部コストを細かく分析し、無駄な費用を削減することが求められます。また、採用基準の見直しや派遣社員やフリーランスの活用、既存社員の離職防止など、多角的なアプローチが必要です。

さらに、コストパフォーマンスの高い採用手法を選定することも重要です。ソーシャルリクルーティングやリファラル採用、求人検索エンジンの活用など、低コストで効果的な手法を取り入れることで、採用単価を大幅に抑えることが可能です。
成功事例からもわかるように、適切な戦略と手法を用いることで、採用コストを抑えつつ、必要な人材を確保することができます。例えば、IT系大手企業D社やシステム系大手企業M社の事例では、ダイレクトリクルーティングを活用することで、採用単価を大幅に削減し、目標人数を達成しています。

最後に、採用単価を抑えるための戦略を実行する際には、社内の協力も不可欠です。採用担当者だけでなく、全社員が一丸となって採用活動に取り組むことで、より効果的な結果を得ることができます。

本記事を参考に、貴社の採用活動を見直し、効率的かつコストを抑えた採用を実現してください。エンジニア採用の競争は今後も続くことが予想されますが、適切な戦略と手法を用いることで、優秀な人材を確保し、企業の成長を支えることができるでしょう。

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